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あるとき、主人が縞模様の描かれた道の前で立ち止まった。
あの大きな四角い怪物が、奇声を上げて走る道だ。
主人はいったいどうしようと言うのだろう?
まさかあの怪物の道を横切ろうというのだろうか。
考えるだけでぼくは震えあがった。
主人が柱に生えた、黄色い箱の赤いボタンを押した。
すると不思議なことに、あの足の速い怪物たちが一斉に立ち止まったのだ。
騒々しい奇声を低いうなり声に変えて、かすかに震えている。
つい今しがたの自分と同じように。
ぼくは主人を仰ぎ見る。
「さあ、行こうか」
ひだまりのようなあたたかな表情で、小さな主人はリードを引いた。
踏み出す主人の小さな足と小さな背中は、陰のせいかひときわ大きく見えた。
そのときぼくは気づいたんだ。
ああそうか、ぼくの主人は神さまだったんだ。
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