仔犬のぼくとかみさま

3/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 あるとき、主人が縞模様の描かれた道の前で立ち止まった。  あの大きな四角い怪物が、奇声を上げて走る道だ。  主人はいったいどうしようと言うのだろう?  まさかあの怪物の道を横切ろうというのだろうか。  考えるだけでぼくは震えあがった。  主人が柱に生えた、黄色い箱の赤いボタンを押した。  すると不思議なことに、あの足の速い怪物たちが一斉に立ち止まったのだ。  騒々しい奇声を低いうなり声に変えて、かすかに震えている。  つい今しがたの自分と同じように。  ぼくは主人を仰ぎ見る。 「さあ、行こうか」  ひだまりのようなあたたかな表情で、小さな主人はリードを引いた。  踏み出す主人の小さな足と小さな背中は、陰のせいかひときわ大きく見えた。  そのときぼくは気づいたんだ。  ああそうか、ぼくの主人は神さまだったんだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!