珈琲

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白いカップの 黒い珈琲に 口づけをし ゆっくりと たぐり寄せると 並んで 座っている 君と僕の ふたりのあいだに 漂う空虚感を 代弁するような 苦味が広がった。 隣の君の視線は “今 この場所”には無く ずっと向こうに 絶え間なく見え隠れする 春のさくらを想っている。 君が嫌みな言葉を 言った訳でも 誰かを傷つける 仕草をした訳もないのに… どうして なにも伝えて あげられないのか… 君に笑ってもらいたいと 地味に苦しむ 自分がいるだけだ 君は君で良いのに… 気にすれば 気にするほど 停車した車の ハザード点滅を 眺めてしまう。 無言のまま 僕は“今 この場所”にいるか? そんなことを問うている 雪がちらついてきた 知らない家にも 雪がつもっていく  
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