本音

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ずっと 待っているだけだったから あなたは愛想を尽かして なにも話さないのが わかっていた。 苛立ちとか 悲しみとか 付き合う喜びとか 面倒くささとか… そういうひとつずつの 感情じゃなくて 私とあなたには もう愛が育めないことを悟った… わかっていたのに うつむいたまま なにも言い出せず 「待ってほしい」 「どうすべきなのだろう」 そんな一言が喉の奥につかえて 意地の張り合いをしたの。 手を振らずに よく知っているはずのあなたは 改札を越えた 群集のなか なにも知らない 他人になってしまった… ぼんやりしてる時は冷静なのに 階段を降りたら 涙が止まらなかった。 「ねぇ…」って それだけでも言えれば良かった? もっと無邪気に あなたの手を握れる女性になりたかった。 私は誰のために我慢したの? 本音を伝える怖さのため? ニットの袖が湿って。 自分のハンカチじゃ足りなくて。 もう 会えないから こんな時ばかり 感情を感じているの? ごめんね? ありがとうね? 個人てなんだった? 他人てなんですか?  
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