一匹の存在

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「「ただいまー!」」 私が物思いに耽っていると、元気な声と共に子ども達が帰って来た。 康輝と爽華は靴を脱いでから洗面所で手を洗うと私の元へやってくる。 私は康輝と爽華も好きだ。 康輝と爽華は、飼育ケースの中をよく掃除してくれる。 ろ過装置を使ってもキレイな水質を保つのは難しく水の交換が必要であり、壁や岩についた汚れは磨いてもらわなければ落ちないのだ。 康輝は飼育ケース内の汚れをブラシで落としてくれるし、 爽華は毎日飼育ケース内の水をチェックして必要ならすぐに水を換えてくれる。 「なんかフーちゃん元気ないなー ほら、元気出せフーちゃん!」 物思いに耽って動かない私を見て、康輝は甲羅をつついて私を動かそうとする。 康輝のこういうところはあまり好きじゃない。私にだって動きたくない時やのんびりしたい時があるのだ。 私が頭や手足を引っ込め甲羅の中に身を隠して抵抗の意を表にすると、爽華が康輝を止めてくれる。 「ちょっとお兄ちゃん、フーちゃん嫌がってるよ。」 「大丈夫だって」 「ダ・メ!」 「…わかったよ。」 頬を膨らませて怒る爽華に根負けして康輝は肩を竦める。 この光景は今までに何度か見たことがあるが、いつ見ても微笑ましいものだ。甲羅から頭を少し出して様子を窺いながら私はほんのりと暖かい気持ちに包まれた。
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