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「康輝、爽華、朝ごはんできてるから早く食べなさい。」
「はーい、フーちゃんまたねー」
「ご飯だー」
母親の香織に呼ばれ、康輝と爽華は居間へ向かう。
ちなみに"フーちゃん"とは私の呼び名だ。
私は、人間が言うところの亀と呼ばれる種族に属しているが、桐崎家の家族は私のことを"フーちゃん"と呼ぶ。
居間へ向かう子ども達と入れ替わるように、一家の大黒柱であり香織の夫である史彦(ふみひこ)が現れ、史彦は洗面所へ向かうと歯ブラシをくわえて私に顔を向ける。
「おはよう、水温はどうだ?
冷たくないか?」
史彦が歯を磨きなから話しかけてくる。どうやら飼育ケース内の環境を気にかけているようだ。
私の飼育ケースは玄関に設置されているが、冬が近づくにつれて史彦が防寒対策を行う為、これといった不満や異常はない。
私は、言葉を喋れないため、首を伸ばしていつも通りのアピールをする。
その姿を見た史彦は「大丈夫みたいだな」と一言呟き微笑むと口を濯ぎ、コートを着て身支度を整える。
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