一匹の存在

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それからは特に問題は無く月日が流れていき、次の冬が訪れ、外が真っ白に染まった頃。 ある日、目を覚ました私に大きな変化が起こっていた。 私は、人間の言葉を理解できるようになっていたのだ。 言葉を理解できているという確証はないが、確信はあった。 初めて人間の言葉を理解できた時、私は嬉しかった。何故そう思ったのかは分からないが、確かに嬉しかった事を覚えている。これは、一年ほど前の出来事だった。 人間の言葉を理解できるようになってから、私の暮らしは大きく変わった。 桐崎家の人間が何を考え、感じ、求めているかなどを理解できるからだ。 私は、それまで他者とコミュニケーションをとることなど皆無だった。親などもよく分からない。 そんな私だが、話すことはできなくとも相手の言葉を理解し、アクションすることで若干のコミュニケーションをとれたことは初めての感覚だったのだ。 そして、それから私は桐崎家の人間の言葉に対して積極的に耳を傾けるようになった。
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