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『君はもうすぐ死ぬ』
「……は?」
真っ白な空間の中、儚げに佇む一人の少女が僕にそう告げた。
『君はもうすぐ死ぬ』
「何で? 何を理由に?」
『君は呪いをかけられている。それを解かなければ、君は年内に死ぬ』
やけに他人事のように言葉を連ねる彼女は続けて、
『呪いを解くには、誰か一人の心を変えなければならない』
「心? どういう意味――」
『――恋をさせなさい。誰か一人に、恋をさせるのです』
◇
夢だった。目が覚めるといつも通りの自室の天井。
「何だありゃ……他人事だからって、俺の立ち位置も考えずに……」
登校中に吐いた溜め息は白く浮かんで空に消えた。
僕に話し相手はいない。ましてや登校中に背中を叩いて「おはよう!」とか言ってくれる友達なんてもっといない。男女揃って。
いわゆる僕は隅っこキャラ。陰キャラ。ぼっち。
顔も別に良くはない。細くて鋭い目付きが、無口な僕の印象をより悪くする。
だから昨晩の夢が仮に本当だとしても、僕が誰かを落とす事なんてできやしない。
「おはよう! 高橋健太君!」
下駄箱にローファーをしまっていると、僕のフルネームを呼びながら背中を叩いてくる奇抜な人間が現れた。
そうだ、話し相手はゼロではない。この学級委員長の児玉さんがいた。
「……おはよう」
ボソッと返すと満面の笑みを見せて、じゃあねと手を振りながら教室に向かっていった。
唯一彼女だけ、男女どちらの友達もいない僕に話しかけてくる。
まぁ、委員長という役職柄、僕みたいな孤独な人間は放っておけないのだろう。
教室に入っても孤独な僕とは違い、彼女の周りにはたくさん人間がいる。
つまるところ、そういう事なのだろう。
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