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身支度しようにも、今の俺には、服と逃げる時にポケット入れておいたにあるヘソクリ、あとは『ゴーストジュエリー』ぐらいだ。
このゴーストジュエリー、あのアホな御先祖様が残した、唯一のゴーストジュエリーである。
能力も力も理解しているが、このジュエリー、本当に使い勝手が悪い。
残すならもっと良いゴーストジュエリー残していけよ、御先祖様。
「ぃよいしょっと、日が暮れてきたし、僕はもう帰らしてもらうよ」
オッサン臭い掛け声で、椅子から立ち上がったピエロは伸びを一つした。
「ここがオッサンの家じゃないのか?」
「やだなあ、ケグロイ君。狐や猪じゃああるまいし、こんな人が住めるかも危ういボロ小屋に、僕が住んでる筈無いだろ。嵐が来たら一発で倒壊だろうねぇ」
殴っていいよね?
「おっと!今時の若者は元気がいいね。元気がいいことは良いことだ、と言う奴がいるけど、元気過ぎるのもどうかと僕は思うなぁ」
クソ、かわされた。
「あ、そうそう、はいこれ」
ピエロはポケットから、小さな指輪を取り出した。装飾一つない、銀色の指輪。
「これは?」
「通信用の魔具だよ。困った時にでも使えば、もしかしたら僕が“相談”にのるかも。使い方はわかるよね?」
魔具
魔力を、通すことが出来る金属を加工したもの。魔具一つに対して、一つの能力が付与できる。能力の効果はその金属の純度によって片寄る。
その魔具の内、通信に分類する魔具を俺に渡すということは、ピエロのオッサンとはそろそろお別れだということ。
「………何でここまでしてくれるんだ?」
当然浮かぶ疑問
「ほっほー、そうだねぇ、ケグロイ君が無知だから」
五月蝿い。
「あとはヴィーノ家の御先祖様への恩返しだよ」
「えっ!?オッサン何か知って―――ってちょっと待て!」
気になる一言を残して、ピエロのオッサンは消えた。
――これが俺とピエロの初めての出会いであり、奇跡による輝石によっての軌跡の始まりだった。
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