1章

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「人の顔見るなり逃げ出すなんて酷いよ。困ってるのに」 「………」 俺のほうが困ってますから。 こいつは昨日のことを覚えてないのか?ないんだな、ないんだろ。 俺からみたお前は、家に火つけた放火魔であり、俺を殺そうとする暗殺鬼なんだぞ。 見た目は美人さんだけど。 俺を殺そうとしていた追っ手は全部で3人、全員が女性だったことは覚えてる。あの時は逃げることに必死すぎて、顔がおぼろ気としか覚えてないが、改めて見るとエライ美人さんだな。 この追っ手その1、腰まで伸びた金髪を一つにくくり、白人であろう白い肌は雪を連想させる肌していて、瞳は青く整った顔立ちから貴族の令嬢みたいだ。 腰にお洒落なポーチをしているが、背に背負っている剣から、さながら女性剣士なんだろうけど。 「ヴィーノ家の罪人君。まずは自己紹介するね。私は【アリア・フロート】。君は?」 「ケイ・ヴィーノ。ケイでいい」 何で俺は、命を狙われた相手と仲良く自己紹介してるんだろ。 「では単刀直入に言います。ケイ君、私、凄い困ってるの。だから助けて!」 「何がどう困ってんだ?」 「助けてくれるの!?」 「話を聞いてからだ」 そして隙をみて逃げる…予定。 「うん!そうだね。昨日君の転移された後、私達も全員別々の場所に転移させられたの。それで連絡を取り合おうと通信用の魔具を使おうとしたら、無くしちゃったみたい」 この子ドジっ子だな。 通信用の魔具は、親機と子機があり、親機は子機全てと通信出来るが、子機は親機としか通信出来ない。 「幸い近くに町があったから入ろうとしたら、通行証がないと駄目なんだって。いつもは騎士証で入ってたけど、君を暗殺する隠務のせいで身分を証明できるものを持ってないの。どうしよお。このままじゃあ飢え死にだよお」 俺には関係ないみたい。
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