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助けてくれたんだ。
だらしなくだぼだぼのシャツを着た中年のオッサンが。
―――――
とある貧相な森の中
―――――
「黒髪くんは、相変わらず過激すぎる青春を謳歌してるねぇ。全くもって、若者は忙しないものだよ」
何もない虚空から、何の前触れも無く突然その姿を現したオッサン。
歳は40そこそこだろう。四方八方に伸びた白髪混じりの品のない金髪、如何にも剃るのが面倒だから少し伸ばしてみましたと誇張している整えられていない顎髭。
身長は大体俺と一緒ぐらいだから、約175cmといったところか。
でもって、一番目を引くもの、それはオッサンには余りにも不釣り合いで不似合いな左手に嵌めている多数の指輪。
指輪の装飾の宝石、ありゃ全部『ゴーストジュエリー』だな。
突然のオッサンの登場に、追っ手の方々も目を点にしていらっしゃる。
俺の今の顔も間違いなく間抜け顔してるだろうな。
それにしてもオッサン………誰なんだ。
俺はこのファンキーなオッサンとは初対面……だ、多分。
にしては妙に馴れ馴れしいな。
何処かで会ったか?
俺がオッサンと会ったことがあるのか、と小さい脳みそをフル回転させて記憶を模索していると、オッサンが一言。
「あ、間違えた」
その言葉と共に俺の見ていた木々7割、追っ手2割、オッサン1割の風景は、今にも倒壊しそうなボロボロな小屋の中に様変わりしていた。
小屋の中には小さな木の椅子が一つと、毛布が一枚あるだけでそれ以外何もない。
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