プロローグ

7/10
前へ
/110ページ
次へ
「俺の名前は黒髪君じゃなくて、ケイ・ヴィーノだ。呼ぶならケイにしてくれ」 「僕と君は初対面なんだよ?ファーストネームで呼ぶなんて馴れ馴れし過ぎて、僕には出来ないなぁ、ケ黒(ケぐろ)イ君」 ケイ+黒髪=ケグロイ…か。 それは親しい友人らにしか呼び合うことはない、ファーストネームを超えたあだ名であり、二つ名だろ。馴れ馴れしいにも程がある。 「それにしても、その歳になって助けてくれた相手にお礼の一つも言えないのかい?親に習わなかったのかなぁ、お礼の仕方」 腰を90度曲げ、俺なりのお礼の意を伝える。 「親はもういない。遅れたが助けてくれて、ありがとうございます」 「知ってるかい?有難うって、実を謂うと感謝の言葉ではあるけど、お礼の言葉とは言い難いんだよねぇ。 本来の有難うの意味は『有り難く』、つまりは珍しい、滅多にない、とかそんなものだよ。それが宗教で変わって感謝の意になって世に広がったそうだ。 それをお礼の言葉に使うなんて。全く、間違いだらけの世の中になったもんだぜ」 「…………」 見知らぬオッサンにスカイジュエリーなんて稀少な物で助けられることは十分に『有り難く』に当てはまるだろうよ。 残念ながら、この国の言語や文字をそこまで深くお勉強している時間も資料も俺には無かったものでね。 かわりにゴーストジュエリーのことなら、家の資料から大体わかるけどな。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加