winter short story

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某年12月24日、午後8時30分。 いわゆる、クリスマスイブ。 駅前の広場には、イルミネーションが煌めく。その周辺を歩き回る、幸せいっぱいの恋人や家族連れたち。 そんな中、俺、タクミは何をしているのかと言えば………… …………どっかの洗脳師の支配下に置かれている、あのファーストフード店で、ただ一人、ポテトをつまんでいた。 「リア充なんて爆発しちまえよ……」 ……と、呟きながら。 こんな事になってしまった理由。まあ、端的に言えば親が悪い。 受験生の俺は駅前の塾に通っている。 センター試験まで残り一月を切り、焦りも出て来た頃だ。 そして、普段ならば家で晩飯を食う所だったが、今日の朝になって、母が突然、「今日、隣の山本さんとご飯行くから、アンタは適当にどっかで食べちゃって」などと言い出し、1000円札を一万置いて出て行きやがった。 もちろん、俺は「はあッ?」って言ったよ? でも母さん、なんて答えたと思う? 「どうせ友達とかと約束してるんでしょ?ちょうどよかったじゃない」 などと吐かしやがった。 そんな余裕ねーっつーの。 つか、俺の学校は進学校だから、他の奴らも受験生なのは変わらない。 要するに、『誰か誘ってクリスマスにメシ』なんて悠長な事に俺と時間を共にするような人間はいないって事だ。 ましてや俺には彼女なんて洒落た存在もいない。 結局、誘う相手もいないまま、塾帰りにこんなところで孤独に便所飯をカッ喰ってるという訳である。
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