winter short story

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しかし、俺もただ、メシを喰ってる訳ではない。 右手で食い物を持ち、左手に単語帳というスタイルでメシを食う。 ホントはあまりやるべきじゃないんだけど……もう、あまり時間がない。 うん、仕方なくだよ、仕方なく。 でも、どうも俺にはこういう所での勉強は向かないらしい。 どうしても周りが気になってしまう。 実際、単語帳見ててもあんまり頭に入って来ない。 「もう、やめるか」 そう呟き、俺はパタンと単語帳を閉じ、辺りを見渡す。 窓の向こうには無駄にデカいクリスマスツリー。 周りの席に客はいるけど、みんなツレがいる。一人なのは俺だけかよ!! ……なんだか悲しくなってきた。 そう思った時だった。 俺の真正面で『ガタン』と音が鳴る。 慌てて正面を向くと、テーブルの向こうには俺の高校の女子の制服。 テーブルの上には、俺のとは別のもう一つのトレイが載っている。 そして、目線を上げると…… 「あれ、サヤじゃん。なんでこんな所で……」 「友達にプレゼント買った帰り道よ。相席、いい?」 いや、いいも何も、許可取る前に座り始めてんじゃん。……別にいいけど。 サヤ。中1の頃から6年間、なぜかずっと一緒のクラスという腐れ縁。 長い付き合いのせいか、俺にとっては完全に悪友的ポジションで定着してしまった。 性格はクール。……他人の前では。 いや、俺の前でも基本的にクールだが、なぜか俺の前では性格が変わる。長い付き合い故なのだろうか…………。 容姿はかなりいい方なんだと思う。綺麗に手入れされた長い黒髪が印象的だ。……だからといって、惚れた事は一度もないが。
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