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不条理な町
精密に積み上げられた積み木のお城はばらばらに散らばって
尻尾を引きずった紳士がお辞儀する
遠ざかる景色はなぜか手に触れて
冷たい感触を残して消える
後ろを振り向けば何もない
感触も感情も高速で消失して
無色透明の世界を行き来する
明日も今日も昨日もない世界で
声を発することもなく
声帯を捨てたのに
ひとりでに積み木のお城は組み上がり
再び尻尾を引きずった紳士がお辞儀する
仕方がないから
お辞儀を仕返そうと振り向いたら
尻尾を引きずった紳士が消えて
積み木のお城は崩されるのを待っていた
だから私は
積み木のお城を駆け抜けて
誰かの待つ世界を目指した
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