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高校生活、二度目の春。
第二学年という事を表す
白地に二本の赤色の線が
入った上靴を見つめながら
たった一人で歩く廊下は
やけに長く感じる。
昼休みなだけあって
廊下には人が溢れかえり
大勢の人から向けられる
視線に対して
つい無意識のうちに
溜め息を吐いてしまった。
溜め息は嫌い。
出来ることなら、あまり
したくない行為の一つだ。
理由は簡単。
溜め息をすれば吐いた
数だけ幸せが逃げていく
という、迷信があるから。
「なあ、知ってる?」
「ああ、二年の……」
「そうそう。
この前"あの"生徒会長の事
を振ったらしいぜっ?」
「はっ?王子をっ!?
うわ・・、まじかよ…。」
「つか、中学ん時は
百人斬りしたとか…」
口々に話され
勝手に広がっていく噂。
あの人を
振ったのは事実だけど
百人斬り
なんてした覚えはない。
だって、中学は共学だった
事もあり
男同士…って奴らは俺の
知る限りでは居なかったし
ハッキリと言ってしまえば
俺は全くモテなかったんだ
それなのに、そんなデマを
流されても困る
まあ、それもこれも全部
この高校に
入学したせいだろうな。
「はあ……っ」
もう一度
吐いてしまった溜め息。
でも、これは仕方ないだろ
だって、少しだけ目線を
上に上げれば視界に入って
きたのは
素敵なまでに男、男、男。
そして、男。
どこもかしこも
男だけなんだからさ。
そりゃ男子校ってなれば
好き好んで男同士で付き
合っている奴もちょっと
ぐらいは居るだろうな
とは、思っていたけど
この高校は"ちょっと"で
済む話じゃない。
ー
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