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俺は女将が出かけた隙に、遊郭から飛び出していた。しかし、違う土地から来た俺は道に迷ってしまった。
女将が帰る前に茶屋に戻らないと大変な事になる。しかし、俺は人と関わるのは、上手い方でない。また、聞いた人が店の常連だったら、外に出たのがバレてしまう。
その時、背後から低い男の声がした。
「どうかされました?」
そう聞いた男は、整った顔立ちをしており、立派な羽織りを身につけていた。
急な事に黙り込んでしまった俺に、その男は
「具合でも悪いのですか?」
と聞いてきた。
見た目で悪い人では無いと判断した俺は、ゆっくりと口を開いた。
「道に…迷ってしまいまして…」
すると男は微笑みながら、俺の目的地を聞いた。さすがに店の名前を出す訳にはいかないので、店の手前の酒屋に行きたいと告げた。すると男は送って行くと言い出した。初対面の人にそんな迷惑は掛けられないと思った俺は、道順だけを教えてくれればいいと告げた。しかし男は
「どうせ私の行く所の近くですから」
と言い、俺を連れて歩きだした。
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