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目的の酒屋に近づいた時、がめつい女の声がした。聞き覚えがあるその声の主を、俺は恐る恐るみた。俺の予想は的中していた。女将が俺を探していたのだ。しまったと思った時はもう遅く、俺を見つけた女将はものすごい顔をして近づいて来た。 「あんた何やってるの!!」 そう言って俺を叩こうとした女将がぴたりと止まった。そして俺の隣を見て言った。 「京介…様…」 「久々だね女将」 俺は呆然とした。あの女将の頭が上がらない位偉い人がいるなんて思わなかったからだ。 そんな俺に女将は挨拶しなと言った。 「はじめまして柴月です」 そう言った俺に京介様は 「越前京介ですよろしく柴月」 と言った。 女将の話によると京介様は、俺のいる陰間茶屋を買い上げた商人らしい。 「今日はどのような用件で」 女将が聞くと、京介様は 「近くに来たから寄っていこうと思って」 そう言って京介様は俺を見た。 「これ子借りてっても良いかな?」 女将は笑顔で答え、俺と一緒に茶屋に入った。
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