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その後も京介様はたびたび俺を訪ねてきた。 京介様はその度に俺を抱き、何度も名前を呼んだ。そして、朝早くに茶屋からでる。 そんな事が半年程続いた時、俺はある噂を耳にした。それは、京介様が婚約をすると言う事だった。 それを聞いた時、俺は心臓を鷲掴みにされたような痛みを感じた。そして、頬に一筋の涙が流れた。しかし、俺はその理由がわからなかった。少し前の俺は、こんな事絶対に無かった。 俺をよく買っていた客が、婚約したり、俺以外の男を身請けにしたりしても、全く気にならなかった。 京介様にだけ、こんな感情をもつのはおかしい。そう思った時、ふと前に女将が言っていた事を思い出した。それは、京介様が俺に足りない物を与えたと言う事だ。 その時は足りない物が何なのかはっきりわからなかったが、今わかった気がした。
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