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天の川がなければいいのに。
願わずにはいられない。
天の川は天に住まう者の生活の要。
……枯れてしまえばいい。
そうすれば、オレは彼女に会えるのだから。
――何を馬鹿なことを…。
自嘲気味に笑って、立ち上がった。
元はと言えば、自らの行いが悪かったから。
だからオレたちは引き離された。
最愛の妻と、一瞬も離れたくなかった。
二人の望みは同じく、いつしか、オレたちは仕事をしないようになっていた。
オレは牛を追うことを止め。
妻の織姫は、趣味の技芸も止め、彼女の奏でる機織りの音も聞こえなくなった。
離れたくなかった。
ただお互いを求め合い、何度も愛を囁いた。
幾度目の晩であったか。
オレたちは天帝の怒りに触れ、引き離された。
天の川を挟んで、対岸に。
オレたちは二度と会うことを許されなかった。
あの日からオレは、毎日天の川の畔に来た。
彼女の姿を一瞬でも拝めればいい、と。
しかし、天の川の川端はあまりに大きく、対岸は見ることさえ叶わなかった。
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