七夕伝説―異聞物語―

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天の川がなければいいのに。 願わずにはいられない。 天の川は天に住まう者の生活の要。 ……枯れてしまえばいい。 そうすれば、オレは彼女に会えるのだから。 ――何を馬鹿なことを…。 自嘲気味に笑って、立ち上がった。 元はと言えば、自らの行いが悪かったから。 だからオレたちは引き離された。 最愛の妻と、一瞬も離れたくなかった。 二人の望みは同じく、いつしか、オレたちは仕事をしないようになっていた。 オレは牛を追うことを止め。 妻の織姫は、趣味の技芸も止め、彼女の奏でる機織りの音も聞こえなくなった。 離れたくなかった。 ただお互いを求め合い、何度も愛を囁いた。 幾度目の晩であったか。 オレたちは天帝の怒りに触れ、引き離された。 天の川を挟んで、対岸に。 オレたちは二度と会うことを許されなかった。 あの日からオレは、毎日天の川の畔に来た。 彼女の姿を一瞬でも拝めればいい、と。 しかし、天の川の川端はあまりに大きく、対岸は見ることさえ叶わなかった。  
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