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その返答に私の頭の中はさっきよりももっとパニック状態だ。
(何であの小屋の資料室で見た“新選組”の人が目の前にいるの?もしかして同姓同名、とか?
・・・いや、もしそうだったとしてもこんな格好しないよね。その前に、何でこんな所にいるの?ここは、どこ?)
疑問が次々と浮かんでくる中、普通なら絶対にあり得ないと思うことが思い浮かんだ。
自分でも馬鹿なのではないかと思う。
けれどここまできてしまってはもうそれしか考えることができなかった。
それほどパニックになり、思考が停止していたのだろう。
(まさか、いや・・・でも、そうじゃないとつじつまが合わないよね?)
「___い__おい_おいっ!」
「えっ?」
私があれこれ考えている間中、たぶん“原田さん”が話しかけていてくれたらしい。
「おい、大丈夫か?どこか痛いところでもあるのか?」
「あっ、いえ。」
「そうか、ならよかった。じゃあ、端によらないと邪魔になるぞ。」
「あっ、はい。」
「じゃあ、気をつけて帰れよ。」
「はい・・・。ありがとうございました・・・。」
“原田さん”は優しく微笑んでから歩いて行った。
(あれ?普通に話してた?)
そんな当たり前のことでさえ、今の私には奇跡のように思えた。
私はしばらくの間、その場に立ち尽くして“原田さん”の歩いて行った方を見つめていた。
「・・・あれ?帰る・・・?」
言われた言葉を思い出していると、ふとそんな素朴だけれどきっと1番大切な疑問が浮かんだ。
(私、どうやって帰るんだろう・・・。というか、いつからここにいるんだっけ?)
「・・・・・。」
(たしか、壬生寺に行ったら女の人に・・・)
「“信じれば”できるかも・・・教えて、手助けすること__」
そんなことを言っていた気がする。
(教えて、助ける)
私は心の中で何度も呟き、その時のことを思い出していた。
『困ったら屯所へ』
気がつくと私は走っていた。
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