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「原田さーん!」
私は原田さんの歩いて行った方へ走っていた。まだそんなに遠くには行ってないはずだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
だけど慣れていない着物を着て下駄をはいて、人ごみをかき分けて走るのは想像以上に大変で疲れる。
それでも止まるわけにはいかない、伝えなきゃいけないことがある!
そう思うと自然と足が前へ前へと動いた。
「原田さん!」
やっと原田さんを見つけた時にはすっかり息が上がり、着物も少し着崩れしていた。
けれど私はそんなことは気にせずに原田さんの羽織の裾を掴んだ。
「おっ、と。あっ、どうしたんだ?」
「はぁ・・・はぁ・・・屯、所・・・」
「えっ?」
「屯所に・・・・連れて行ってください」
息をするのも苦しいくらいの中、いつも以上に小さな声だけれども私は絞り出すかのように話を続けた。
「お願い、します。皆さんに、教えなきゃ・・・」
「皆に教える?」
「私は、皆さんを、助けたいんです・・・」
言っていることも話している順番も無茶苦茶だった。
けれどあの女の人の言っていたことを伝えなきゃ。
その一心で同じ言葉を繰り返しながらも話を続けた。
「屯所に行けば、話して伝えることができれば、きっと皆さんを助けることができるんです・・・。」
少しずつ普通に話せるようになってきたと同時に、なぜか涙がでてきた。
自分でも涙を流していることに驚いたけれど、あの資料室で見たことを思い出すと涙があとからあとから溢れ出して止まらなかった。
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