新選組～紅桜恋～ （沖田総司編）

始まりは。

「無茶なお願いなのは分かっているんです・・・でも、伝えなきゃいけないことが、あるんです。」
「・・・・・。」
「もしかしたら助けるなんて、できないかもしれません・・・。余計なお世話かもしれないです・・・。でも、少しは、幸せになってもらえるかも＿＿笑顔で、いてもらえるかもしれないんです。」
「・・・・・。」

原田さんはただ黙って私の無茶苦茶な話を聞いていた。

「お願い、します。」

私はそう言いながら深々と頭を下げた。
涙が頬を伝いポタポタと、まるで雨のように地面をぬらしていく。
こんな所で、こんなにも涙を流しているなんて自分は本当にどうかしてしまったのかと思うほどだった。これは夢の世界の話なのだろうかとすら思った。
けれどただ一つ、必死になっているということだけは本当で、本心なんだろうと思った。

「・・・分かった。」

しばらくの沈黙のあと、私の頭の上で低い優しい声が響いた。

「えっ？」

顔をあげると、原田さんが優しく微笑んでいた。

「近藤さんや土方さんに掛け合ってみる。だから、もう泣くな。」

そう言って、そっと涙をぬぐってくれた。
その手はあまりにも温かく、大きくて＿＿

「いっ、いいんですか？」
「いいもなにも、お前から言ったことだろ。」
「・・・あっ、ありがとうございます。」

私は再び深々と頭を下げた。

「いいんだよ。じゃあ、行くか。」

原田さんは私の頭を優しく撫でると、ゆっくりと歩き始めた。