始まりは。

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中に入ると、今までに感じたことのないような視線と威圧感を感じた。 私はゆっくりとふすまを閉めてふすまの近くに立っていた。 「そこに座れ。」 ふすま側、つまり私から見て右側に座っていた人が鋭い目線で目の前の座布団を見ている。 「・・・しっ、失礼します。」 小さな声で言ったけれど、緊迫感でいっぱいの静かな部屋には響き渡った。 原田さんは部屋の隅に膝を立てて座っていた。 「原田から話は聞いている。」 私が座ったのと同時に、右側の人が話し始めた。 (この人が“近藤さん”なのかな?威厳がありそうだし、話してるし、なにより・・怖い。) 「あんた、原田に泣きついてまで屯所に連れて行ってくれ。って言ったらしいな。」 「あっ・・・」 私は急に自分のした事が恥ずかしくなり、うつむいた。 今までそんなことをしたことなどなく、思い返せば思い返すほど恥ずかしくなった。 「別に悪いっていうわけじゃないんだから、うつむくことはないだろ。」 そう言われて、ゆっくりと顔をあげると__ やっぱり鋭い目つきで見ている・・・。 「だがな、見ず知らずの女を屯所に入れるなんて前代未聞だからな。」 「えっ・・・そう、なんですか?」 私は思わずそう言っていた。 (あれ?そんなこと書いてあったっけ?) 私は必死に自分の記憶を辿ってみた。 「なんだ、あんた。新選組が女禁制だって、京に住んでいながらも知らなかったのか?」 「新選組・・・」 その言葉を目の前で、この時代の人に言われると急に現実感がわく。 ここが屯所で、新選組だということを認めるには充分に思える。
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