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「何だ、新選組を知らないのか?」
「いえ・・・知ってます、けど、その・・・」
まだ自分のいる時代のことも、そもそもこれが夢なのか現実なのかも分からず整理がついていない状態で、こんなにも緊迫した場所にいるとどうしても頭の中が真っ白になってしまう。
「何だ?はっきり言わなきゃ分からないぞ?」
「土方さん、この子の話を聞くんじゃなかったのか?」
急に原田さんの声が聞こえた。
「あっ、あぁ。そうだったな。」
その原田さんの声に反応したのは、近藤さんだと思っていた人だった。
(“土方さん”・・・?今、“土方さん”って言ったよね?この人は近藤さんじゃないの??)
そう思った私は思わず左側に座っていた人の方を見た。
そんな私の視線に気がついたのか、“近藤さん”らしい人が優しく微笑んでくれた。
「___い__おい!聞いてんのか?」
その人の笑顔で少し安心していたけれど、土方さんの大きな声でまた緊張して、緩めていた拳を強く握り締めた。
「歳、そんな大声をだしたらこの子が驚くだろう。」
土方さんにそう言っている人はとても優しそうで、とてもあの銅像の“近藤さん”には見えなかった。
「近藤さん、見ず知らずの奴にそんな甘いこと言ってちゃ駄目だろう。」
けれど土方さんの言葉でこの人は“近藤さん”なんだと確信した。
(近藤さんの声って、優しくて温かい声なんだなぁ。・・・本当にこの人が局長さん?そういえば、土方さんのこと___)
「鬼の副長・・・。」
って書いてあった気がする・・・。
「今、何て言った?」
「・・・えっ?」
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