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気がつくと土方さんは怒った顔で、近藤さんと原田さんは今にも笑い出しそうだった。
いろいろと整理しながら考えていたつもりが、いつの間にか声に出ていたらしい。
「誰が、鬼の副長だって?」
「あっ・・・」
「新選組が女禁制だってことは知らなかったのに、そういうことは知ってるんだな。」
原田さんが笑いながらそう言った。それにつられて近藤さんも笑っている。
「かっ、書いてあったんです。」
私は急いで弁解しようと咄嗟にそう言っていた。
その弁解の言葉は“土方さん”の中で引っかかったらしく、さらに険しい顔で問いかけてきた。
「書いてあった?どこにだ?」
「しっ、資料室に・・・。」
「資料室?」
「壬生寺の中の、小屋の中にある資料室、です。」
「・・・・・。」
さっきまでの和やかな雰囲気は一瞬でなくなった。
みんな一斉に難しそうな顔をして、何か考え込んでいるみたいだ。
「あの、私その壬生寺で女の人と出会って、その人を追いかけようとして外に出たら、この時代に____」
「ちょ、ちょっと待て。何言ってんだ?」
原田さんが慌てた様子で尋ねてきた。
「女の人とか、資料室とか。ここには資料室なんていう名前の所ないぞ?それにこの時代にって__」
「あっ、それは・・・」
少しづつ話そうと思っていたことを、つい緊迫した空気に流されて話してしまっていた。
「それは?」
黙って聞いていた土方さんが鋭い目つきで私の方を見る。
(ちゃんと話さなきゃ。そのために来たんだから。)
私は覚悟を決めて強く握りしめている拳を見つめてからゆっくりと顔を上げた。
「それは、その、信じてもらえないと思いますが・・・というか、私も信じられないことなんですが____」
私は小さく深呼吸をした。まだ少し肌寒い空気が肺の中に入ってくるのを感じる。
「私は・・・たぶん、未来から来ました。」
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