プロローグ

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桜吹雪の舞う季節_____春 出会いは突然だった。 4月。学年が一つ上がったばかりの季節。 高校3年生、つまり受験生になったというのに、授業中でも相変わらずうるさい。 「じゃあ、幕末に活躍した人の名前を・・・赤口、お前から順番に言ってけー。」 先生はそんなうるさい環境に慣れているからだろうか、まだ4月だからという余裕があるからだろうか、注意することもなく授業を進めている。 「えー、オレかよー!」 ちらりと時計を見ると、あと10分ほどで授業が終わることが分かった。 運よく赤口とは対角線上の一番遠い席、つまり窓側の列の一番後ろの席の私は、今日中には当てられずに済むみたいだ。 そう思い、私は窓越しに外を見た。 外は桜吹雪の嵐。丘の下にいる大勢の人々が小さく見える。 ____ここは京都。 春は道という道が観光客であふれかえっている。 そんな人ごみを見て、帰りはまたあの人ごみをかき分けていかないといけないのかと思い、うんざりした。 そう思った時、チャイムが鳴り響いた。 授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったことに大喜びする男子たちの声がする。 そんな声も、毎日聞いていると雑音にしか聞こえなかった。 「じゃあねー!」 「ばいばーい。」 私の周りの席の人たちはそう言いあって帰っていく。 そんな人たちをよそに、私は無言で教室を出た。
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