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「原田さん、新八さんが__」
そこまで言うとその人は私を見て固まってしまった。
その人は小柄で、私とそこまで歳が変わらないように見える。
「・・・なんで、女が?__なんで女がいるんだよ?!」
その人は今度は急に大声で叫びだした。
「ちょ、平助。そんな大声出すんじゃねぇよ。」
「だって、じゃあ、何でか説明してくれよ!」
「それは今から近藤さんや土方さんが説明してくれる。」
「近藤さんと土方さんが・・・?」
「そうだ。皆を呼んでくれるように頼まれたんだよ。」
原田さんはそう言ってその人の腕を掴んだ。
「じゃあ、お前はその部屋で待ってろよ。」
次に私にそう言うと急に後ろを振り返った。
「沖田さん!あなたもだからな!」
そう言うと“平助”と呼ばれていた人の腕を掴んだまま来た道を戻って行った。
私は言われたとおりに部屋で待っていようと思い角を曲ろうとした時、あの隊士がこっちを見ているのに気がつき、ちらりと横目で見ると__
(目、合った・・・?)
一瞬、目が合った気がした。
しかしその人はそのまま後ろを向いて歩いて行ってしまった。
空き部屋の中には物が一つもなく、ふすまの左側に小さな小窓がついてあるだけだ。
私は窓のある方へ歩いて行き壁に寄りかかるようにして座った。
「どうなるんだろう・・・。」
誰もいない、静かな空間には私の声が響き渡る。
急に寂しさと不安でいっぱいになった。
私はそんな気持ちを振り払うかのように大きく息をはき、無意識のうちに着物の裾を掴んでいた。
そしてただ茫然と目の前を見ていた。
(さっきの小柄な人、“平助”って呼ばれてたよね?っていうことは、“藤堂平助”さんかな?)
壬生寺の資料室で見たことを思い出しながら名前を照らし合わせた。
(桜の木の下にいた隊士さんは、“総司”だったよね?
・・・あの人が、“沖田総司”。・・・怖そうには見えなかったけどな。なんだか)
「悲しそうだった・・・。」
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