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辺りが暗くなり始めた頃、ガラッという音と共に部屋のふすまが開いた。
「夕餉だ。」
そう言って藤堂さんが私の目の前に御膳を置いた。
ご飯といってもいつも食べているようなかんじのではなく、当たり前だけど和食で、ご飯が小盛りで小さないわしが一匹、それとシジミのみそ汁が御膳の上に並べられている。
「えっ、いいんですか?」
「いいもなにも、食べなきゃ死んじゃうだろ?」
「あっ、ありがとうございます。」
「いいんだよ。・・・それと、これ。」
藤堂さんはそう言って小さい男物の着物を置いた。
「俺が小さい時に着てた着物だ。」
「・・・いいんですか?」
「あぁ。他の隊士にばれない為にも、これ着とけよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ。」
藤堂さんがそう言って部屋を後にしようとした時、
「あの、藤堂さん。」
私は藤堂さんを呼び止めた。
「ん?」
「あの・・・いきなり来て、ご迷惑をかけて本当にごめんなさい・・・」
さっき沖田さんに言われた言葉が何度も頭の中でぐるぐる回っていた。
結局は自分勝手な行動をして、目的のこともきちんと果たせていなくて、なんのためにここにいるのか___
それを考え始めると尚更自分が嫌になってきた。
「・・・・・別に、迷惑なんかじゃないよ。」
「えっ?」
少しの沈黙のあと、意外な言葉をかけてくれた。
「いや、その、正直、ほんとに未来から来たなんて信じれてないけど、お前は・・・柚葉は気にしなくていいから。」
「えっ・・・?」
「迷惑とか、そういうの。きっとみんなそう思ってる。」
藤堂さんは微笑んでくれた。
「藤堂さん、ありがとうございます。」
「あぁ。」
単純かもしれない。けれど私はその言葉で少し気持ちが軽くなった気がした。
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