始まりは。

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「あの、」 振り返ると女の人の姿はなかった。 (さっきの人、どこに行ったんだろう…。) そう思いながらも、“本当の武士たち”のことが気にり小屋の中に入った。 中にはお土産用なのだろうか、ファイルやキーホルダーがずらりと並んでいる。 そのお土産のほとんどに『誠』という文字が書かれている。 資料室はその真後ろにあるみたいだ。 私は入館料を払い、資料室へと続く階段を降りようとしたその時… 小屋の中に風が吹き込み、お土産台の横に掛けてあった名前入りのカレンダーがめくれ上がった。 その中で横目で一瞬だけ、しかし何故かはっきりと見えたものがあった。 _____“沖田総司”と。 資料室の中は女の人が言っていたとおり“本当の武士たち”つまり、“新選組”のことについての資料がたくさんあった。そこには新選組の歴史や隊員のことについてなど、私が知らなかった、授業では教えてくれない"幕末"の歴史があった。 私はその資料を一つ一つ見ていく度、胸がぎゅっと締め付けられ、熱くなるのを感じた。 ここに来る直前に見た“沖田総司”という名前もたくさん見つけた。 どうやらその人は“新選組”の一番組隊長で、剣の腕が組の中でも1、2を争うほどよかったらしい。 私はそれを見て直感的に少し「怖いな」と思ったのだった。 胸が締め付けられているような感覚のまま資料室を出て、小屋の奥にある小さな庭に向かうと庭の奥には銅像があった。
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