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「この人は・・・」
(たしか、“近藤勇”。“新選組”の局長さんだ。)
「・・・・・。」
私はただじっとその銅像を見つめた。
激動の時代の幕末を、この人たちは一体どんな風に、どんな気持ちで生きたのだろう。
死ぬのは、怖くなかったのだろうか・・・。
私の頭の中はいつのまにか様々な、誰も答えを知らない疑問であふれかえっていた。
「もし・・・私がこの時代に行けたなら、“新選組”の人たちにどんな結末なのか、教えてあげることができるのに・・・」
私は無意識にそうつぶやいていた。
「って、そんな事できないけどね。」
自分でもこんなことを考えることがあるのかと少し驚いた。
そんな夢のようなこと、起こるわけがない。
それは自分がよく知っている。知っているはずなのに・・・
初めて彼らのことを知ったはずなのに、
「どうして?」
胸を締め付ける謎の痛みは消えることはなく、どんどん増している。
私は思わずぎゅっとブレザーの襟元を掴んだ。
「できるかもしれませんよ。」
すると急に後ろから声がした。
(聞き覚えのある声__)
そう思いながら振り返ると、さっきの女の人が立っていた。
「教えて、手助けすること・・・信じればできるかもしれませんよ。」
女の人はそう言いながら優しく微笑んだ。
「どういうことで__」
今度は私の言葉を桜吹雪がさえぎった。
「困ったときは、屯所へ。」
桜の花びらが舞い散る中、女の人の透き通る声だけがこだました。
____桜吹雪がやんだ頃には、女の人の姿はなかった。
「信じていれば、か。」
私は小さくつぶやき歩き始めた。
辺りはすっかり夕暮れで、自分の影だけが細長く地面に映っている。
“信じる”。
それは私が1番嫌いな言葉だ。
だからなのか、こんな不思議な気持ちになったことはないからなのか、理由は分からないけれどなぜが心の奥に響いた。
(変なこと考えるのはやめよう・・・。)
そう思いながら小屋から出ようとのれんに手をかけた時、
「きっとあなたなら大丈夫。」
女の人の声がした。
辺りを見回したが女の人の姿はなく、外かもしれないと急いで小屋から出た。
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