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「あの、一つお聞きしたいんですが・・・」
「何だい?」
「今って、“平成”ですよね?」
「へーセー?何だい、そりゃ。」
おじさんはそんな言葉聞いた事もない。というようなかんじだ。
「えっと、じっ時代です。」
「時代?そんなもん、徳川の将軍様の時代だろう。」
「徳川の、将軍様・・・?」
そんなことは当たり前とでも言いたそうなおじさんが、あまりにもさらりと言ってしまうので頭の中が余計にパニック状態になってしまった。
「・・・・・。」
こんなことあるのだろうか、こんな非現実的なことがいきなり起こるのだろうか。と思いながら私はふらついた足取りで道の中央に向かっていた。
ドンッ
呆然としながら歩いていると、私は誰かとぶつかってしまい鈍い音と共によろめいてしまった。
「・・・っと、大丈夫か?」
そんな倒れそうになった私をぶつかってしまった人が支えてくれ、その声で少しだけ我に返った。
「あっ、すみません。ありがとうござ__」
お礼を言おうと顔をあげた私の目の前に広がったのは、浅葱色の羽織だった。
そのままゆっくりと目線を上にすると、次に現れたのは大きな槍だった。
「槍・・・浅葱色の羽織」
「えっ?」
「・・・もしかして」
浅葱色の羽織、少し時代遅れのような大きな槍。
さっきまで見ていた資料の内容が、頭の中を駆け巡る。
そしてなぜか間違いはないと確信した。
「原田、左之助さん・・・ですか?」
ゆっくりと顔をあげ、目を見つめながら無意識に訪ねていた。
「何で、俺の名前を?」
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