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ハルは、ひとしきり泣いた後俺の腹から顔を離した。
涙が止まってはいたけれど、目はうさぎみたいに真っ赤になっていた。
かわいそうででもかわいくて、ハルをぎゅっと抱きしめる。
こちょこちょとハルのお腹をくすぐると、ハルがくすぐったげな声を出して笑った。
初めて聞いた笑い声にほっとして、俺からも少し笑い声が漏れる。
「あぁそうだ……ほら、これがハルのプレゼントだよ」
傍らに置いていたピンク色のプレゼントを持ってハルのお腹の上に置いた。
何故かハルが少し悲しそうな目で俺の事を見つめる。
「……どうした?
ピンク、嫌い?」
心配になって聞いてみると、ハルがゆるゆると首を横に振った。
「んー……袋より、箱に入ってる方がよかった?」
またハルの首が横に振れる。
どうしたんだろう。
さっぱり分からない。
「じゃあ、どうした?」
ハルの肩が震えて、大きな目が俺を見つめた。
茶色く澄み切った瞳がまた潤んでいて、ものすごく焦る。
「ハルがプレゼント貰ったら……」
尻すぼみに小さくなっていって消えてしまったハルの声に、不安になる。
どうすればいいのか考えてみたけれど分からなくて、ハルの小さな体をぎゅっと抱きしめた。
「ハルがプレゼント貰ったらどうなるの?」
出せる限りの優しい声でハルに聞く。
ハルの体が頼りなげに揺れた。
ハルから、うぅっと泣くのを我慢するような声が漏れる。
背中を一定のリズムでゆっくりと叩いた。
「ハルにプレゼント渡したら、どうなるの?」
「ハルがプレゼント貰ったらサンタさんは……サンタさんは」
またううぅっと、泣き声を堪えた声が聞こえる。
胸の奥が痛んで悲しくて、どうすればいいのか分からない。
「サンタしゃんは……サンタさんはぁ、ハルにばいばいするぅ……くぅぅっハルまた一人になってっうっ……」
ハルが、何をそんなに悲しんでいるのか分かった。
俺が、何でハルの泣く顔を見るとこんなに悲しいのかも分かった。
こんなに人に求められたのは初めてだった。
こんなに人から離れたくないと思ったのも、初めてだった。
胸の奥でジンジンする何かを感じながら、ハルの体を抱きしめたまま左手でハルの頭を撫でる。
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