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「ハル、ハル、来年また会えるよ。
俺はハルの為にとびっきりのプレゼントを作るって約束するよ。
だからハルも、俺に向かって思いっきり笑って」
ハルにピンク色のプレゼントを渡した。
中に何が入っているのか知らないけれど、ハルが喜ぶ物だったらいいなと思う。
ハルはそれを両手で受け取って、また涙で潤んでしまった瞳で俺を見た。
「ほらハル、開けてみなよ。
俺もハルのプレゼント見たいな」
ハルがこくりと頷いて、ピンク色のラッピングを崩しにかかった。
4番目のトナカイにソリの準備をするよう耳打ちする。
長くいればいる程離れ難くなる。
ハルを見るとラッピングを崩し終えたようで、中から薄い紙に包まれた何かを取り出していた。
布製の物が入っているらしい。
──防寒着だったらいいな。
ハルの事を見ていた誰かが、寒そうなハルの為に俺に託したのかもしれない。
その人が俺の代わりにハルと一緒にいてくれればいいのに、と唇を噛む。
包装紙を破くと、ハルの顔が驚いた後に輝いた。
痩せたほっぺにえくぼが出来て、そこにだけ光が射したように見えた。
どうやらハルにとって凄く嬉しい物だったらしい。
よかった、と息をついた。
それでハルが少しでも慰められればいいと思った。
――本当は、俺が慰めたかった。
親の分まで愛したかった。
……そんなのただの建前で、ただ離れたくなかった。
温かさを感じたのは初めてだった。
人間と離れたくないと思ったのも、初めてだった。
──ハルといたい。
初めての気持ちに凄く戸惑った。
でも今はそんなどろどろとした本音を隠して、ハルが笑顔になった事をただ喜びたかった。
「サンタさんっっ!!!!」
ハルが顔をより一層かわいく輝かせて、俺に抱き着いてきた。
後ろにこけそうな程の勢いで抱き着いてきたハルをどうにか受け止めて、抱きしめた。
ぽんぽんと背中を叩く。
「いいものだった?」
「うんっっ!!!!」
「すっごく嬉しかった?」
「うんっっ!!!!」
本当に嬉しそうに笑うハルに、笑顔がこぼれる。
「メリークリスマスだね、ハル」
最後にハルをぎゅっと抱きしめて立ち上がった。
ハルから離れると、さっきまでの温かさが嘘のように寒さが身に染みた。
ソリはトナカイ達のおかげで準備万端だった。
「サンタさん待って!!!!」
背を向けた俺に、ハルがニコニコと笑いながら言った。
「ちょっとそっち向いてて!!」
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