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貰った物をお披露目してくれるんだろう。
ハルに背を向けたまま立ち止まって腕を組んだ。
お別れの時が刻一刻と迫っているのを感じた。
まぶたの奥がまた熱くなる。
一度涙腺が緩むと、なかなか治らない。
「サンタさんっっ!!!!」
ハルの声と一緒に、ドンッと腰に衝撃が走った。
ハルが抱き着いてきたんだと分かった。
トナカイ達を見ると、驚いたように目をむいている。
7番目のトナカイがしきりに鼻面をゆらして、後ろを見るように促した。
振り返ってみると、赤い服を着たハルが俺の腰に抱き着いていた。
さぞかし俺も驚いた顔をしていた事だろう。
ハルが着ているそれは、紛れもなく俺が着ているサンタ服と同じものだった。
「ハル……ハル、それは……」
「サンタさんと一緒だよ!!
ハル、サンタさんと一緒だよ!!」
ハルが喜びを全身で表すかのように飛び跳ねた。
俺は、まだ呆然としている。
──こんな事があっていいのか?
喜びが俺の中にもじわじわと広がるのを感じた。
──こんな、こんな奇跡みたいなことが?
俺の中から喜びが溢れ出すのを感じた。
ハルもニコニコと笑って俺を見上げている。
赤い服を着たハルは顔色がよく見えて暖かそうで、かわいかった。
「ハル、サンタさんと一緒に行く!!
サンタさんと一緒に暮らす!!」
ハルを抱き上げてぐるぐると回った。
ハルがきゃぁぁあと声を出して笑った。
うわぁぁあとか、おぉぉぉおとか、何だかよく分からない声を上げながらハルと一緒にたくさん笑った。
──ハルと一緒だ。
──ハルと、ずっとずっと一緒だ。
ハルにも、俺達の周りを跳ね回るトナカイ達にも月と雪の光が反射して、キラキラと輝いた。
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