クリスマス短編

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-SanTa- 月の光が嬉しげに輝くから、誰がプレゼントを落としたのか分かってしまった。 プレゼントを落としたのは、カミサマじゃなかった。 月に向かってソリを滑らせると、月が慌てたようにチカチカと光った。 ──やっぱり、月だった。 出来る限り月にソリを近付けて、出せる限りの大きな声で叫んだ。 「メリークリスマス!! ありがとう!!」 それだけ言って離れようとしたけれど、その時ふと月の気持ちが流れ込んできた気がした。 月が、全身で寂しいと叫んでいる気がした。 「月が綺麗ですね!!!!」 世界中の人達の愛情を俺が代表して月に伝えるのも悪くないと思って、もっと大きな声で月に叫んだ。 月は、日本のある作家がある英語をこう日本語に訳してみせたことを知っているだろうか? 月は、世界中の人と一緒にあるんだよと伝えたかった。 暖かい家の中でも寒い外でも、一人でも皆と一緒にいても、守られた場所でも危険にさらされた場所でも、雲さえ無ければ月はひょっこりと顔を出す。 月が皆を見守るように、皆が月を眺めて何かを考える。 ──月は何語を理解するんだろう? ふと思ったけれど頭を振ってそんな考えを打ち消した。 月も、俺と一緒でずっとずっと長い間空に在るんだ。 俺と一緒で、どの国の言葉だって分かるに決まってる。 月の光がまた穏やかになったから、トナカイにひいてもらって月から離れた。 「サンタさん、さっきお月様になんて言ってたの?」 「ん?」 俺の袖をひいてそう聞いてきたハルに応える。 「月が綺麗ですねって言ったんだよ」 「ツキガ? キレイデス、ネ?」 ハルが、不思議な呪文のようにそれを繰り返す。 日本語の響きが耳に珍しかったのかもしれない。 「月が、綺麗ですね」 「ツキガ、キレイデスネ」 「うん、そうだよ。 月が綺麗ですね」 ハルにも同じ言葉を心を込めて言うと、不思議そうに目をきょどきょどさせて俺を見上げた。 「それって、どういう意味?」 「ん? ……これはね」 ハルの体を抱き寄せながら、この年の差は世間的にアリなんだろうか、と不安になった。 でも俺とハルは世間とは関係ないところに行くんだから、と自分で自分を慰める。 「月が綺麗ですねっていうのはね」
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