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ビニール質の厚めの袋を両手で持って眺めながら、思わず首を傾げた。
──こんなプレゼント、あったっけ?
記憶を何回辿っても、どうもあったようには思えない。
なかなかの大きさのプレゼントだ。
いくらなんでも、これを見落とすことなんてないだろう。
「なぁこれ、俺が今の家にプレゼントを届けに行く前からあったっけ?」
誰とは言わずに聞いてみると、3番目のトナカイが頭をふった。
「うぅん、なかったよ。
サンタクロースがプレゼントを届けに降りていった後に、上から降ってきたんだよ」
「……上から?」
妙な話もあったもんだ。
毎年、配るプレゼントは全部俺のハンドメードだ。
世界の離れ小島の中で、俺が作って俺が包んで俺が届ける。
だから上からプレゼントが降ってくるなんて有り得ない。
第一ソリよりも高い場所から物を降らすなんてこと、誰が出来る?
それに──
手に持った薄ピンク色の袋を眺める。
──こんな包装はしていない。
今年のプレゼントは全部箱に入れてある。
袋の包装なんて一つもしていない。
ますます不思議で首を傾げる。
──上から降ってきた、なんてさ。
カミサマの仕業じゃないんだから。
サンタがいるんだからカミサマがいてもおかしくないけれど、と呟いて笑ってみる。
「サンタクロース、プレゼント届けに行くだろ?」
6番目のトナカイが生意気そうな声をあげた。
「そりゃ届けにいくさ、俺の仕事なんだから。
どこに届けるのか分かるか?」
1番目のトナカイが頷いた。
プレゼントの届け場所へは、いつもトナカイが連れて行ってくれる。
トナカイはとても鼻がいい。
ソリに乗っている間俺が出来ることといったら、トナカイの視界をよくするために月の光を遮る雲を払うことくらいだ。
トナカイがいないとプレゼントは届けられない。
それくらい、トナカイ達には助けられている。
「夜の間に行けるところか?」
「もっちろんだよ!
僕達は足が速いんだから」
5番目のトナカイが可愛らしい声で叫んだ。
「じゃあ、行こう。
連れて行ってくれ」
静かな街の中に、鈴の音が響き渡った。
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