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トナカイは、ある石橋に俺を連れてきてくれた。
プレゼントを持ってソリから飛び降りてみたはいいけれど、一体どうすりゃいいんだろうかと首を捻る。
「おぉい、ほんとにここで合ってるのか?」
「合ってるよぉ」
上に留まるソリに声をかけると、4番目のトナカイが呑気な声で返事をした。
「家がないぞ」
「だけどここだよぉ」
「なんにもないぞ」
「知らないよぉ。
橋の下でも覗いてみなよぉ」
橋の下に家があるわけでもあるまいしとは思いつつ、仕方がないから下の河原に飛び降りてみる。
周りを見渡しても特に何も目につかない。
「うわぁ」
やっぱりいないじゃないかとトナカイに声をかけようとすると、女の子の声が耳に届いた。
……なんだ?
耳を澄ましてみると、もう一度さっきと同じ声が聞こえる。
「凄い!!」
声の出所は橋の真下のようだ。
暗い橋の下に目をこらすと、なるほど何か小さなものがいるように見える。
──多分この子だろうな。
最後のプレゼントの行き所はこの子だろう。
渡す相手が本当にいた事に安心して、ほっと息をつく。
「何が凄い?」
橋の下に近づきながら聞いた。
かわいらしい声が答えてくれる。
「上から急に降りてきて凄いなって思ってね、なんかね天使さんみたいだなって思った」
「へぇ、天使さんって俺みたいな人なの?」
橋の下に着いて、笑いながら聞いた。
「わかんない。
見た事ないもん。
でも凄く綺麗でね、雪がキラキラしててね、天使さんって綺麗なんだって聞いたから、天使さんだって思った」
「へぇ……そうなの。
でも俺はねぇ、天使さんじゃないんだ。
サンタクロースっていうんだよ」
「え!?
サンタさん!?」
その子の大きな目が暗がりで輝いた。
「ハルのとこにも来てくれたの!?
ハル、悪い子なのに?」
暗いからどんな顔をしているのかわからないけれど、声の調子が尻すぼみに暗くなった。
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