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用心にと(ジャッキーに無理矢理持たされている)ジーンズの後ろポケットに忍ばせた小型ナイフに手を添えたまま、通行人を装うつもりで近寄ってゆく。
が、あと数歩の距離まで近づいて、不意にその正体がわかった。
「?…なんや、アーセナルやん。なにしてん、こんなトコで。」
俯いた顔が跳ね上がり、伸ばした髪が隠していた表情が見る間に少し緩んだ。
それは気まずさと、少しの安堵がない交ぜになった、まるで悪戯を見つかった子供のようだった。
「あぁ、マックか…。なんでもないわ。」
目線を合わせようと側らにしゃがみ込んだマックから、ふいと顔を逸らしてしまう。
「…?なんでもないてオマエ、こんな時間になんで…」
口にしかけた疑問は、そのまま消え失せた。
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