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乾燥した季節のせいか、掘り返す地面はひどく固く、思いの外苦心して二人がかりで小さな穴を掘った。
そうして、ようやく埋め戻したときには、あたりはほの明るくなっていた。
湿った黒土の穴の底に、小さな身体を降ろしたときも。
穴の底に包んだままのパーカーの生成り色が土に覆われて見えなくなってゆくときも、ふたりとも無言で。
そこだけ色の違う黒土の小山の前で、アーセナルが煙草を取り出す。
最初の紫煙を味わう前に、横から引ったくられた。
その驚いた顔を横目に、マックは咥えて深く吸い込んだ。
「…なんや。」
「いや…、珍しいモン見た。」
「こっちの台詞や。」
慣れない肺に広がる煙の息苦しさと、目の奥が痛むというように瞬くマック。
暫し互いの紫煙が朝焼けの空に昇ってゆくのを、無言で見送った。
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