ブラック・アウト 1

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…? 僅かに耳に届いたのは、季節外れの遠雷だろうか。 低くけぶった真冬の闇空を見上げながら、マックはまた大きく鼻を啜った。 赤く腫らした眼にぼやけて映る視界には星ひとつない。 人通りの途絶えた深夜の町で、しばしぼんやり立ち尽くす。 「まるでさっきの映画のエンディングみたいや。」 誰もいなくなった街に取り残された主人公は、ひどく幸せそうで、満足げに微笑んでいたのだ。 あの役者は、本当にひとりとりこのされる恐怖を知らんのやろな。 そう結論付けてはみたものの、胸の塞がりはずっと消えてくれない。 しっているから。 たったひとり、世界に置いてきぼりにされる現実を覚えているから。 確かに掌にあった、なにもかもを一瞬で失うあの感覚を忘れられないから。 もし。 もしも再びそんなときが来たら。 そのとき、自分はなにを思うんやろうな…
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