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…?
僅かに耳に届いたのは、季節外れの遠雷だろうか。
低くけぶった真冬の闇空を見上げながら、マックはまた大きく鼻を啜った。
赤く腫らした眼にぼやけて映る視界には星ひとつない。
人通りの途絶えた深夜の町で、しばしぼんやり立ち尽くす。
「まるでさっきの映画のエンディングみたいや。」
誰もいなくなった街に取り残された主人公は、ひどく幸せそうで、満足げに微笑んでいたのだ。
あの役者は、本当にひとりとりこのされる恐怖を知らんのやろな。
そう結論付けてはみたものの、胸の塞がりはずっと消えてくれない。
しっているから。
たったひとり、世界に置いてきぼりにされる現実を覚えているから。
確かに掌にあった、なにもかもを一瞬で失うあの感覚を忘れられないから。
もし。
もしも再びそんなときが来たら。
そのとき、自分はなにを思うんやろうな…
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