聖夜の奇跡

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寒さを誤魔化すように足早に歩く人たち。 街に溢れる幸せそうな恋人たち、笑顔満開の子供とてを繋いで歩く笑顔の夫婦。 キラキラとイルミネーションが輝く街中は幸せで溢れていた。 クリスマスソングがどこからか流れてくる駅前の大きなツリーを見上げる。 大小様々なオーナメントがチカチカと照らされては仄かにキラリと輝きを放つ。 チカチカとカラフルな灯りが点いては消える。 不規則に見えて規則的に点滅する灯りを見上げながらぎゅっと両手を握り締めた。 今年こそ……。 くるりと踵を返しツリーから離れる。 幸せそうな人々の隙間をひとり祈るように歩く。 勇気を振り絞るように一歩一歩踏み締めていく。 気を抜けば歩みが止まってしまいそうだ。 それでも奇跡を信じて私は歩き続ける。 今年こそ、今年こそは……。 自分に言い聞かせる。 大丈夫。 ――……本当に? 心の奥底から聞こえてくる不安を煽る声。 思わず歩みを止めてしまう。 街の喧騒からはだいぶ遠ざかってしまった。 こんな日にここに来るのは、私くらいだろう。 否、私と彼くらいなものだろう。 不安を振り切って再び歩み始める。 彼が待つ場所へと向かうために。
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