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分かったよ……。
一人の青年が妥協の言葉を口にして、沈黙を破った。
「約束は約束だしな。教えてやるよ、アンタの事を『イカサマ』って言ったヤツを」
一旦、間を置かせて“イカサマ師”と出任せを言い触らしたその人物について話した。
「名前は、『中崎』つーヤツだ」
「中崎……?」
色んな奴らと対局している為に、名前を聞いてもピンと来なかった。
腕を組み、首を傾げる自分に彼は助言する。
「容姿は丸坊主で中太り――」
「あぁ…、アイツか……」
それを言われ、思い出した。
確かにそういう奴と、一度だけ対局した。
あの時は結構得点が入ったな――と言う印象が残っており、更には向かいに座っていた中太りの丸坊主の人物が悔しそうな表情(カオ)して、怒った眼孔で睨んでいたのも記憶に残っている。
「――……成る程な」
犯人は分かった。
あとは其奴が、何処に居るかを突き止めるだけ。
この二人なら知っていそうと思い、問い質す。
「……で、その中崎って奴は今何処に居るんだ?」
「あー……、今の時間帯なら仕事じゃねぇかな?」
「仕事……?」
この疑問に、もう一人の青年が答えた。
「あぁ、何でも小さな広場でやってるらしいぜ」
「そうか…」
広場……か。
情報を提供した彼らに、一応礼を言って、また地下麻雀荘を後にして薄暗い階段を上ったのだった。
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