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――――――――――――――
「……………」
丁場から数分歩いた処。
ここら辺にちょっとした広場――と言うよりは、空き地と言った方が表現的には合っている。
確かココだよな……。
右手側に木の板の柵が短い距離で立てられていた。
「チクショー…!」
入り口と思わしき合間から、その言葉を発して歯を食い縛った顔を浮かべた男が二人の連れに慰め・宥められながら出て来た。
「………?」
「さーさー、次の挑戦者は誰だー?」
「…ん?」
男らが出た入り口付近で、別の声が聞こえた。
この場所で空き地の様子を見てみれば、野次馬だか見物人だか、人集りが出来ていた。
その中には丸坊主中太りの男一人が売り込みしている。
足下には一つの箱。
――あの男が“中崎”だな……。
空き地の敷地内に入り、その人集りを掻き分け前に出て、一旦観察する。
「さぁ、誰か居ないか?一回五百、もし俺を一回でも殴ることが出来れば、その倍額を賞金としてあげるぜ。
さぁ、どうだ?挑戦する奴は居るかい?」
……何やら賭け事みたいなのを持ち掛けているようだ。
威勢の良い売り込みに、集まった人達は遠慮がちで嫌気な表情でヒソヒソと話し始めた。
「って、言ってもなぁ……」
「アイツ見た目の割りには、身のこなしが良いからねぇ……」
「ぜってー当たらねーよ…」
「…これじゃあ、一方的にアイツにお金が貯まるだけだっつーの」
と、口々に言っていた。
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