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「!!…」
頬を殴られ、地面に倒れたこの男。
「ぐっ……!」
「どうした?思い出させるんじゃないのか…?」
うつ伏せの状態から起き上がろうとする中崎に、そう言いながら近付くと、その足音を聞いてか声か、反応した。
体ごとコチラに向けたのである。
「ひっ……!!」
『コイツには勝てない』と言う恐怖を覚えたらしく、情け無い声を発した彼は尻餅を付きながら後退りする。
「す、すみませんでした……」
そして、この一言だ。
「俺が悪う御座いました…」
更には土下座して謝罪の意を述べる。
何に対しての謝罪の言葉なのか、自分には分からない。
――なので、問い質す。
「何が悪いかったんだ?いきなり殴り掛かった事か?」
「い、いえ……。自分が弱いにも関わらず、それを貴方の所為にしてしまい――尚且つ、有りもしない事を言い触らしてしまい、申し訳御座いませんでした」
土下座している状態で、彼は丁寧な言葉遣いで深々と御辞儀する。
「…………」
間違い無く、反省と後悔はしているようだ。
更に、彼に近付き腕を伸ばす……。
「ひっ……!?」
中崎はもう一回殴られると察し、悲鳴に似た声を出した。
しかし、その腕は彼の横を通り過ぎ、横にあった彼が持ってきた箱に手を入れて銭を手の内に握り、取り出しただけの単純な動作で終わっただけであった。
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