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「…何勘違いしてんだ?俺は怒りが収まるまで殴り続ける程の、人間じゃねぇんだ…。心の底から謝ってれば、許すさ。
もし次、俺と対局して負けても、もう言わねえよな……?」
少し覇気を込めた言葉で言った。
中崎は頭を下げながら答えた。
「は、はい…。もう、二度と言いません…」
まるで殿様にでも成った気分だ……。
……悪いことをしたな……。
「それなら良い…」
そう一言口にして踵を返し、この場を去ろうとす。
「っと…」
――だが、もう一つ言うべき事を思い出して立ち止まった。
「――そうだ…、賞金は受け取っとくぞ」
「え……?」
思わずその一言には、中崎は顔を上げた。
「お前を殴ることが出来たら、払った倍額を受け取る事が出来る……そう言う“商売”だったよな?」
「は…はぁ……」
「なら…、ありがたく頂戴する」
手に包んだ銭を懐に入れた。
そして、呆気な顔を浮かべる中崎から離れ、人集りに近付くと勝手に道を開けてくれる人々の間を通り、この場から去る。
これで…ひとまずは安心だろな…。
次は普通に、勝ち負けだけに拘る勝負でもしよーぜ。中崎さん。
空き地から出て、その出入り口の所――そんな気持ちを、朝空を見上げながら馳せた。
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