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「さて……行くか」
気持ちも晴れ晴れとしたことだし、一息吐いてから歩き出した。
――寄るべき場所を一つ、思い出した。
この人里では名も知れてる場所だ。
朝方はちらほらとしかいなかった人の数だが、今のこの朝の時間帯になると、随分と通りに出ている。
これで、この里にも活気付くってもんだ。
「ん…?ワッと…!」
後ろから二人の男女の子供が両脇を駆け抜けてきた。
「…………」
二人の子供は元気一杯にその先へと消えていった。
何やら、ゴール地点まで駆けっこしていたみたいだ。
――擦れ違い様、その二人が楽しげに声を掛け合っていたのを聞いて、そう判断した。
この光景に通常、普通の人だったら『微笑ましい』、と思えるだろう。
――が、自分はただ何気なく見ていた……。
あの子供らが走り去って消えた方向と同じ道を進んでいく。
そして、目的地(ゴール地点)も同じだ。
その場所、その入り口の目の前まで歩み、立ち止まった。
“寺子屋”。
――人里に唯一存在する学び舎。
大抵の子供達は、此処で学んでいる。
主に“歴史”らしい。
受けた事が無いから、何を学んでいるかなんて詳しくは知らない。
ただ……そう、聞いただけだ。
この寺子屋で学ぶ子供から……。
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