第1章 怪異な死体

31/72
前へ
/200ページ
次へ
「それではひとまず、休憩を取ろう。その後、授業の続きをする」 慧音のその一言が言い終わった瞬間、ドタバタと足音を発てるのが、後ろの壁と横の廊下から聞こえた。 そしてその後に、寺子屋の庭で遊ぶ子供達の活気ある声も……。 元気イイな……、子供は。 授業が一時切り上げられてから五分程待つと、この部屋の襖が開いた。 「待たせてすまなかったな」 と、盆を持って慧音が入ってきた。 「……いや、別に。外の景色でも見て、暇を満喫してたよ」 「ふふ、そうか」 彼女は向かい側に座りつつ、盆に乗せてあるお茶を前に置いてくれた。 それを掴み、湯呑みの縁を唇に当てて、一口ゆっくりと飲む。 湯呑みを卓袱台の上に置き、自分の方から話を切り出した。 「……良い事言ってくれるじゃねぇか」 「え…?あっ、あぁ、聞こえてたのか?」 「……筒抜けだったぞ」 「恥ずかしいな」 慧音は、こそばゆくはにかみながら頬を掻いた。 「“親友”…か……。そう思ってたんだな」 「当たり前だろ。月に何回もこうして来てくれてるんだ。それに私の話し相手にもなってくれる。妹紅と同じ、“親友”の言葉以外見付からないよ」 妹紅(モコウ)…何度か話題で出てくる人の名だ。 ……その話を聞く限りでは、かなり親友であるみたいだ。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加