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「そうか……」
面には出すことは無かったが、心の底は少し嬉しいと思っていた。
すると、慧音がこんな事を話し始めた。
「あ、もしかして今日も……か?」
「あ……?」
「ほら、寄附金さ。何時も渡してくるだろ?」
「……その言い草、迷惑そうだな」
「いや、寄附する事は有り難いと思ってる。ただ、別に経済面に困ってるって訳じゃないのに、何でそういう事をするんだ?」
「……………」
彼女が抱く疑問に、黙って答えた。
「……言いたくは無い、か……。大体察しは付くが………」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
「それよりも寺子屋は、別に時雨の寄附金が無くても継続して行けるさ。だから、自分の首を絞めるような行為はしなくて良いだぞ」
「……俺は勝手に、好きでやってるだけだ…。お前は黙って、ただ受け取ってくれれば、それで良い」
そう言い終わって、立ち上がった。
「――……それに今日は顔を見せに来ただけだ」
襖を開けようと、取っ手に手を掛ける。
「……なぁ」
「ん?」
「“護る”って何だろうな……」
「!……」
そう一言を口にして、部屋を後にした。
「……やっぱり……時雨の奴……」
慧音は彼が部屋を出た時、思い詰めた表情でそう呟いた。
廊下に出でて玄関へと向かう際、フと隣の部屋――授業部屋へと眼を向けた。
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