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教室の中では何人かの子供が残っていた。
その中で眼に入ったのは、机に向かって先程の授業の復習らしきのをしている男の子と、その復習を優しく手伝っている年上と思われる女の子の風景。
「…………」
――口を閉じながらも、歯を食い縛った。
あの二人を憎む理由は無い筈なのに……。
憎しみの中に哀しさがあった。
悔しさがあった。
……特にあの女の子を見ると、それらの感情が尚一層強まる。
重ねてしまう……。
見るに堪えなくなり、この場を離れて寺子屋を出た。
「…………」
その場に立ち尽くし、大きく息を吸った。
「……何してんだ…俺は……」
顔に手を当て、そんな言葉と共に吸った息を吐く。
どうにかして強まった感情を数分時間を掛けて鎮めた。
「……行くか」
歩き出したその時である。
バタバタと羽ばたく羽翼の音が聞こえた。
「ん…?」
視線を上に向けると、ちょっと大きな影が降りてきていた。
それは鳩――自警団員同士が連絡を取り合う手段である伝書鳩だ。
腕を差し伸べると鳩は止まり木のように止まり、少しの間だけ羽を休めに入る。
鳩の細い右脚に、小さな筒が紐で括り付けられており、それを取り外して中身を取り出す。
取り外すと直ぐに鳩は腕から飛び立ってしまった。
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