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「……で、新羅…。何で、召集されてるって分かるんだ……?お前の元にも届いたのか?」
あの伝書鳩は連絡手段の一つであるが、別に個人が特定の個人だけに連絡を取るだけではなく、個人が複数の相手に連絡を伝える事も当然出来る。
だが、そのような措置が採られるのは、今回のような緊急性のある事柄が殆どである。
従って、彼も例外では無いと思えた為、そう質問を投げかけたのである。
「いえ、俺みたいな新人に来ませんよ。時雨さんと同じように正門から出て来る先輩方から聞いただけです」
「成る程……そうか」
すると、唐突に新羅は何かに気付いたらしくこう言い出した。
「あ、すみません、お時間取らせてしまいまして……」
「……いや、別に。お前が呼び止めなかったら、お前のこと知らないままだったしな……」
申し訳無いと云う表情を浮かべ、少し背を曲げている新羅に何時も通りの低い声で宥めるように言った。
「ははっ…時雨さんにそう言われると、嬉しいですね」
お陰で彼は微笑みを浮かべた。
「……じゃあな」
「はい。お気を付けて」
目的地に向かうだけで、何に対して気を付ければ良いのか分からないが―ま、道中だろうが―その気持ちは受け取ろう。
踵を返して足を踏み出した。
後輩は先程居た場所に座り直し、自警団としての仕事に再び取り掛かった。
さて、俺もそろそろ仕事に向かうか……。南東は……コッチだったな。
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